「ごめんなさい」と直子は言って僕の腕をやさしく握った。そして何度か首を振った。「あなたを傷つけるつもりはなかったの。私の言ったこと気にしないでね。本当にごめんなさい。私はただ自分に腹を立てていただけなの」
“对不起!”直子说道,然后轻轻地握住我的手腕,摇了摇头。“我并不想伤害你,别在意我说的。真的抱歉!我只是在生自己的气而已。”
「たぶん僕は君のことをまだ本当には理解してないんだと思う」と僕は言った。「僕は頭の良い人間じゃないし、物事を理解するのに時間がかかる。でももし時間さえあれば僕は君のことをきちんと理解するし、そうなれば僕は世界中の誰よりもきちんと理解できると思う」
“我想大概是因为我还不算真正地了解你吧!”我说。“我不顶聪明,想了解某些事物都得要花时间才行。不过只要有时间,我就可以好好地了解你,我可以比谁都了解你。”
僕らはそこで立ちどまって静けさの中で耳を澄ませ、僕は靴の先で蝉の死骸や松ぼっくりを転がしたり、松の枝のあいだから見える空を見あげたりしていた。直子は上着のポケットに両手をつっこんで何を見るともなくじっと考えごとをしていた。
我们伫立在那里,倾耳聆听这一片宁谧。我用鞋尖去踢蝉的残骸和松枝,从树隙间仰望天空。直子则将两手插进上衣口袋里,一动不动地陷入沉思。
「ねえワタナベ君、私のこと好き?」
「もちろん」と僕は答えた。
「じゃあ私のおねがいをふたつ聞いてくれる?」
「みっつ聞くよ」
直子は笑って首を振った。「ふたつでいいのよ。ふたつで十分。ひとつはね、あなたがこうして会いに来てくれたことに対して私はすごく感謝してるんだということをわかってほしいの。とても嬉しいし、とても――救われるのよ。もしたとえそう見えなかったとしても、そうなのよ」
「また会いにくるよ」と僕は言った。「もうひとつは?」
「私のことを覚えていてほしいの。私が存在し、こうしてあなたのとなりにいたことをずっと覚えていてくれる?」
「もちろんずっと覚えているよ」と僕は答えた。
“喂!渡边,你喜不喜欢我?”
“当然喜欢!”我答道。
“那我可不可以拜托你两件事?”
“三件都可以!”
直子笑着摇头。“两件就可以了。两件就够了!第一件,我希望你明白,我非常感激你能够到这儿来和我碰面。我非常高与,算是——得救了。也许你看不出来,但这是事实。”
“我还会再来呀!”我说。“那另外一件事呢?”
“我希望你永远记得我。永远记得我这个人,我曾经在你身边。”
“我当然会永远记得。”我答道。
彼女はそのまま何も言わずに先に立って歩きはじめた。梢を抜けてくる秋の光が彼女の上着の肩の上でちらちらと踊っていた。また犬の声が聞こえたが、それは前よりいくぶん我々の方に近づいているように思えた。
她一言不发地走到前头去。透过树梢射进来的秋日阳光,在她的肩头上熠熠跳跃着。我又听到了狗叫声,似乎比刚才更近了。